水回り工事、設備工事のスペシャリスト
熟練技能者・青年技術者が技能レベルを競う 技能グランプリ 技能五輪への挑戦

競技委員インタビュー

エキスパートに聞く
「技能五輪国際大会における選手育成について」

石井敏明

略歴
  • 昭和35年生まれ
  • 昭和58年(株)千代田設備入社、現第2工事部部長。
  • 新潟市管工事業協同組合技術委員。
  • 技能五輪国際大会配管職種で第39回(日本・静岡県大会)、
    第40回(カナダ・カルガリー大会)、第41回(イギリス・ロンドン大会)、
    第42回(ドイツ・ライブツィヒ大会)、第43回(ブラジル・サンパウロ大会)と
    5大会連続でエキスパート(競技委員)を務める。
  • 自らは平成5年第12回技能グランプリ大会優勝(労働大臣賞受賞)

国内大会から国際大会まで一年弱の限られた期間内で世界に通用する選手を育成しなければなりません。国内大会と国際大会とでは、選手の指導や練習方法が、考え方から何から「全く」といっていいほど違うんです。技能五輪国際大会における選手育成の柱となるのは、次の4つのステップですね。これが育成方針です。

  1. 基本能力

    技能五輪国際大会では、今まで施工さえしたことがない技術が課題として出されます。例えば、BMS(鋼管)のガス溶接などは、一般の設備工事においてはまず使うことのない技術ですが、大会に参加するヨーロッパの選手たちにとっては、それが普段の仕事になっているものですから、まともに競技したら勝負になりません。

    ですから、彼らと同じレベルまでスキルを上げるために、ガス溶接を中心に基本作業を何度も何度も繰り返し練習させます。あまりに単調な繰り返し練習のため、選手は途中で飽きて集中力がなくなり、他の課題の練習をしたがりますが、この基本カテゴリーをクリアーしないと次のステップには絶対に進ませません。平日は通常業務終了後から深夜まで、休日は早朝から深夜まで徹底的に練習させます。

  2. 総合的能力

    基本を完璧にマスターさせた後、ようやく作品作りに入らせます。このカテゴリーは、世界大会の配管職種定義(TD)のルールに合わせ、時間と寸法、継手の評価、曲げの精度等作品の評価判定を行います。作業の組み合わせ一つ一つについて細かく評価していくため、選手にとっては精神的に辛くなる時期です。やっと作り上げた作品を我々がこっぴどく評価するものですから(笑)。でも、選手は悪い箇所の反省と改善を行い、次の作品へとつなげていきます。精神的には追い込まれて悩み苦しみますが、結果的に心の鍛錬になり精神的に強くなるのがこのステップですね。

  3. 精神強化

    大会3ヵ月前に参考課題が発表されると、次のカテゴリーにステップアップします。「総仕上げと精神強化」、ここまで到達すると選手は技術、技能の面ではかなりのレベルに達します。しかし、一番大事なのは精神強化です。選手には「ものづくりは人づくり」、「心・技・体」の心を徹底的に教育します。今の若い選手にとっては理解するのに時間がかかりますが、自然と受け入れられるようになります。ここまでの指導で95%が完成します。

  4. リフレッシュ

    最終ステップは「心のリフレッシュと体調管理」、大会への仕上げに繋がっていきます。大会前約3週間の練習期間を設けて選手の気持ちをリフレッシュさせます。これからが一番大事な点です。外国の環境の中で不安やプレッシャーで体調を崩す場合があります。今まで積み上げた練習が水の泡とならないようにコーチ、スタッフは常に選手の状況を見守り、指導を繰り返します。これで一人前の競技者となり戦いに出るわけです。

選手育成以外での苦労話も数えきれないほどありますね。一番の苦労は競技で使用する材料で練習ができないことでしょうか。競技使用材料に関してはホスト国がすべてを提供することになっていますので、開催国によっては日本で手に入らないものも多くあり、我々にとっては大きなハンディなんです。選手は間違いなく不安になりますね。ですから、それを解決するために我々はあらゆる努力をしなければなりません。今後、これらの環境を最善にし、世界で戦える選手の育成に努めたいと思います。

技能競技大会への挑戦